この記事の執筆・監修|院長 福島 康浩(精神保健指定医/日本精神神経学会 精神科専門医・指導医)
「大人になってからASDかもしれないと思ったが、病院にかかるといくらかかるのか」「発達障害の検査は自費だと聞いて踏み出せない」——ASD(自閉スペクトラム症)の受診を考えるとき、費用の見通しが立たないことは大きな障壁になります。結論を先にお伝えすると、ASDの診察は健康保険の対象です。ただし、ADHDとは異なり中核症状そのものに保険適用の治療薬はありません。この記事では、どこまで保険が使えるのか、実際に何にお金がかかるのかを整理します。
⚠️ 緊急のときは
「消えてしまいたい」「自分を傷つけそう」といった切迫した状態では、通常の予約を待たず、身近な方、地域の精神科救急医療相談窓口、または緊急時には119番へご相談ください。
結論:ASDの診察は保険適用になります
ASD(自閉スペクトラム症)は健康保険の給付対象となる疾患です。精神科・心療内科を保険証を持って受診すれば、診察は通常どおり3割負担(年齢や保険の種類により1〜3割)で受けられます。
ただし、ASDの医療にはADHDと異なる特徴が2つあります。この違いを知っておくと、費用の見通しが立てやすくなります。
- 中核症状に対する保険適用の治療薬がない——対人コミュニケーションの特性やこだわりそのものを薬で変える治療は確立されていません
- 診断に時間がかかることがある——生育歴の聞き取りや複数の検査を要するため、初診から診断まで複数回の通院になることがあります
保険が使えるもの・使えないものの一覧
| 項目 | 保険適用 | 補足 |
|---|---|---|
| 初診・再診の診察 | ○ | 通常の保険診療 |
| 診察に伴う心理検査 | ○ | 診療報酬上の点数が定められています |
| WAIS-Ⅳなどの知能検査 | △ | 保険で行う医療機関と、自費コースを設けている医療機関があります |
| 併存する不調(うつ・不安・不眠)の治療薬 | ○ | それぞれの疾患としての治療 |
| ASDの中核症状に対する治療薬 | — | そもそも承認された薬がありません |
| 公認心理師によるカウンセリング | ×(多くは自費) | 実施形態により異なります |
| 診断書・意見書などの文書 | × | ただし傷病手当金の意見書は保険適用 |
初診・再診でかかる費用の目安
保険診療の自己負担は行った診療内容によって変わりますが、精神科・心療内科ではおおよそ次の水準になります。
- 初診——3割負担で2,400〜3,000円程度
- 再診——3割負担で1,500円程度
(アウル五反田駅前心療内科の料金ページに掲載の目安。医療機関や実施内容により金額は変わります)
ASDの診断では、初診で現在の困りごとと生育歴を伺い、必要に応じて検査を行い、後日結果をふまえて見立てをお伝えする、という流れになることが多くあります。初診だけで診断を確定せず、必要に応じて複数回の診察や心理検査を経て見立てを行うことがあります。
ASDの検査費用はどうなるのか
知能検査は診療報酬上、保険で算定できます
成人の発達特性の評価でよく用いられるWAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査 第4版)は、診療報酬点数表の「D283 発達及び知能検査」の『操作と処理が極めて複雑なもの』(450点)にあたります。450点=4,500円ですので、3割負担なら1,350円という計算です。
WAIS-Ⅳそのものは知能の検査であり、ASDを判定する検査ではありません。しかし、WAIS-Ⅳでは、全検査IQ(FSIQ)に加えて、言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度の4つの指標を評価します。結果は、実際の生活上の困りごとや検査中の様子などとあわせて解釈し、その方の認知特性や支援方法を考える手がかりとします。
このほか、ASDの評価では自記式の質問紙(AQなど)や、養育者から生育歴を聞き取る評価尺度が用いられることがあります。
自費で実施している医療機関もあります
一方、WAIS-Ⅳを自費(1〜3万円程度)で実施している医療機関も少なくありません。検査と採点、報告書の作成に心理職が長時間を要すること、結果説明の時間を十分に確保していることなどが背景にあります。
WAIS-Ⅳを保険診療として実施するか、自費診療として提供するかは医療機関によって異なります。 また、保険診療の場合も、医師が診療上必要と判断し、算定要件を満たすことが前提です。ご予約の際に確認しておくと確実です。
当院の場合
アウル五反田駅前心療内科では、初診時に保険適用内での心理検査を行っています。そのうえで、より詳しく特性のプロフィールを把握したい場合は、WAIS-Ⅳの自費コース(1日目13,000円/2日目の結果説明7,000円、18歳以上・日本語を母国語とする方が対象)をご用意しています。検査は約90〜120分、結果は2〜3週間後の説明となります。
なお、心理検査は単独で診断を確定させるものではありません。診察で伺った経過とあわせて総合的に見立てを行います。
東京・五反田エリアで受診先をお探しの方へ
本記事の監修医師が院長を務めるアウル五反田駅前心療内科では、WEB・LINEから初診のご予約が可能です。
▶ ご予約はこちら(WEB・LINE対応)
ASDの治療で保険が使われる場面
ASDの中核となる特性に直接作用する薬はありませんが、次のような場面では保険診療としての治療が行われます。
1. 併存する不調の治療
ASDの方は、周囲との行き違いや環境との不適合が続くなかで、うつ状態、不安、不眠などの二次的な不調を抱えることがあります。これらはそれぞれ独立した疾患として保険診療の対象となり、薬物療法も保険が適用されます。
実際の受診では、この二次的な不調がきっかけになることが少なくありません。適応障害や社交不安障害との見極めも、診断の重要な役割です。
2. 易刺激性への対応(小児期)
小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性(強いいらだちや興奮)については、リスペリドン、アリピプラゾールという2剤に適応があり、保険適用となります。ただしこれは中核症状の治療ではなく、行動面の問題への対応であり、成人に対して同じ枠組みで用いられるものではありません。
3. 環境調整と対策の相談
薬に頼らない部分がASDの支援では大きな比重を占めます。困りやすい場面をあらかじめ言語化し、伝え方や業務の進め方を工夫すること、職場に必要な配慮を求める方法を整理すること。診察のなかで一緒に考えていく部分です。
自立支援医療の対象となれば自己負担は原則1割になります
ASDなどの精神疾患について、継続的な通院治療が必要と認められ、自立支援医療(精神通院医療)の対象となった場合、対象となる医療費の自己負担は原則1割となります。さらに世帯の所得に応じて、ひと月あたりの上限額が設けられています。
| 所得区分 | 負担上限月額 |
|---|---|
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 低所得1(住民税非課税・本人収入80万円台以下) | 2,500円 |
| 低所得2(住民税非課税・上記を超える) | 5,000円 |
| 中間所得1(住民税所得割3万3千円未満) | 医療保険の自己負担限度額(「重度かつ継続」なら5,000円) |
| 中間所得2(同3万3千円以上23万5千円未満) | 医療保険の自己負担限度額(「重度かつ継続」なら10,000円) |
| 一定所得以上(同23万5千円以上) | 原則対象外(「重度かつ継続」なら20,000円・令和9年3月31日までの経過措置) |
(出典:厚生労働省「自立支援医療制度の概要」、東京都福祉局「自立支援医療(精神通院医療)について」。2026年8月時点)
申請は、主治医に自立支援医療用の診断書(当院では3,500円)を作成してもらい、お住まいの区市町村の担当窓口に提出します。受給者証の有効期間は1年で毎年更新が必要、診断書の提出は2年に1度です。
ASDが対象になるかどうかは、症状や治療の必要性をふまえた主治医の判断と自治体の審査によります。診察のなかでご相談ください。
診断書などの文書は保険適用外です
職場に提出する診断書や、各種申請用の書類は全額自己負担です。当院の場合は次のとおりです。
- 診断書(当院所定用紙)——3,500円
- 自立支援医療申請用診断書——3,500円
- 精神障害者保健福祉手帳申請用診断書——7,000円
- 障害年金申請用診断書——10,000円
- 主治医意見書・就労可能証明書——3,500円
なお傷病手当金の申請書に医師が記入する意見書は保険適用で、当院では3割負担で300円です。
受診の流れ
- 予約——WEB・LINE・電話などで初診を予約します
- 問診・診察——現在の困りごとと、子どもの頃からの経過を伺います。通知表、母子手帳、当時のエピソードを知るご家族の話などがあると参考になりますが、なくても差し支えありません
- 心理検査——必要に応じて実施します
- 診断・方針の相談——検査結果と診察を総合して見立てをお伝えし、環境調整や併存する不調への対応を相談します
初診時は保険証(またはマイナ保険証)を必ずお持ちください。
よくある質問
Q. 診断がつかない可能性もありますか?
あります。特性の傾向はあっても診断基準を満たさない場合や、別の要因で困りごとが生じている場合があります。診断の有無にかかわらず、困りごとへの対策を一緒に整理することはできます。
Q. 家族に付き添ってもらったほうがいいですか?
子どもの頃の様子を知る方が同席されると、生育歴の把握に役立ちます。ただし必須ではありません。
Q. ADHDと両方の特性がある場合はどうなりますか?
ASDとADHDは併存することが知られています。どちらの特性も評価したうえで、方針を検討します。
Q. 診断されると就職に不利になりますか?
診断内容が本人の同意なく第三者に伝わることはありません。一方で、障害者手帳や就労支援制度を利用する選択肢が広がる面もあります。診察のなかでご相談ください。
まとめ
- ASDの診察は健康保険の対象。初診3割負担で2,400〜3,000円程度が目安
- 中核症状に対する保険適用の治療薬はない。併存する不調の治療と環境調整が中心
- 知能検査は保険で行う医療機関と自費の医療機関があり、事前確認が確実
- 継続的な精神科通院が必要な場合は、自立支援医療の対象となり、自己負担が原則1割となることがある
「特性を確かめること」自体が目的ではなく、生活や仕事のしづらさを軽くすることが目的です。困りごとが続いている場合は、費用の見通しを立てたうえで、一度ご相談ください。
ご予約について
本記事の監修医師・福島康浩が院長を務めるアウル五反田駅前心療内科(五反田駅徒歩2分)は、朝8時から診察を行っており、当日の診断書発行、WAIS-Ⅳによる認知機能の評価、カウンセリングに対応しています。
アウル五反田駅前心療内科では、初診時の診察に加えて、必要に応じてAQ-J(自閉スペクトラム症の特性を評価する質問紙)など、保険診療の範囲で実施できる心理検査を行っています。そのうえで、より詳しい認知機能の評価が有用と判断した場合には、WAIS-Ⅳの自費コースをご案内しています。
初診のご予約はWEB・LINE・お電話(03-5447-0300)から可能です。
▶ アウル五反田駅前心療内科のご予約はこちら(WEB・LINE対応)
※本記事の制度・費用に関する情報は2026年8月時点のものです。診療報酬や公的制度は改定される場合があります。実際の費用は受診される医療機関にご確認ください。