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うつ病・適応障害で傷病手当金を申請する手順|必要書類・金額の計算・期間をわかりやすく解説

この記事の執筆・監修|院長 福島 康浩(精神保健指定医/日本精神神経学会 精神科専門医・指導医/日本医師会 認定産業医)

うつ病・適応障害などで仕事を休むことになったとき、多くの方が最初に不安になるのが収入です。「休職中は無給になる」「貯金がもたない」——その不安が、休むという判断そのものを難しくしてしまいます。こうしたときに使えるのが健康保険の傷病手当金です。給与のおよそ3分の2が、最長で通算1年6か月にわたって支給されます。この記事では、支給の条件から申請書の書き方、金額の計算、つまずきやすい点までを順に整理します。

⚠️ 緊急のときは
「消えてしまいたい」「自分を傷つけそう」といった切迫した状態では、手続きの前に、身近な方、地域の精神科救急医療相談窓口、または緊急時には119番へご相談ください。

傷病手当金とは

傷病手当金は、健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガで仕事を休み、その間の給与を受けられないときに支給される給付金です。うつ病、適応障害、不安障害などの精神疾患も対象となります。

制度の目的は、療養に専念できるように生活を支えることです。「病気で休む=収入が途絶える」という状態を防ぐために設けられています。

注意:傷病手当金は健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合)の制度です。国民健康保険には原則としてこの給付がありません。自営業やフリーランスの方は対象外となる点にご注意ください。

支給される4つの条件

次の4つをすべて満たす必要があります。

  1. 業務外の事由による病気やケガで療養中であること(仕事が原因なら労災の対象になります)
  2. 仕事に就くことができない状態であること(療養担当者=医師の意見をもとに判断されます)
  3. 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと

(出典:全国健康保険協会「傷病手当金」。2026年8月時点)

給与が支払われていても、その額が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。

「待期3日間」でつまずかないために

条件3にある最初の3日間を待期といい、この3日間には傷病手当金は支給されません。重要なのは連続していなければ成立しないという点です。

たとえば、休んだ→休んだ→出勤した→休んだ、という並びでは待期は成立しません。もう一度、連続3日間を積み直す必要があります。

一方で、待期の3日間には有給休暇、土日、祝日を含めても構いません。無理に欠勤扱いにする必要はありません。

支給される金額の計算

1日あたりの支給額は、次の式で計算します。

支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2

標準報酬月額とは、毎月の給与などをもとに決められる健康保険上の基準額です。詳しくは勤務先や加入している健康保険にご確認ください。

計算例

標準報酬月額の平均が30万円の場合。

  • 30万円 ÷ 30日 = 10,000円
  • 10,000円 × 2/3 = 1日あたり約6,667円
  • 30日休んだ場合、およそ20万円

入社まもない場合はどうなるか

被保険者期間が12か月に満たない場合は、次の2つのうち低いほうを使って計算します。

  • 支給開始日の属する月以前の、直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額
  • 32万円(支給開始日が令和7年4月1日以降の場合。それ以前は30万円)

支給される期間

支給を開始した日から通算して1年6か月です。

ここで大切なのが「通算」という言葉です。令和4年1月1日から通算化されました。それ以前は「支給開始日から1年6か月」という暦の上での期間だったため、途中で復職した期間もカウントされてしまっていました。

現在は、途中で復職して支給が止まった期間はカウントされません。復職を試みて再び体調を崩した場合でも、残りの期間を繰り越して受け取れます。うつ病のように回復と再発を繰り返しやすい疾患にとって、実務上とても大きな改正です。

(出典:厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」

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申請の手順

ステップ1:申請書を入手する

「健康保険傷病手当金支給申請書」を、加入先(協会けんぽ/健康保険組合)のウェブサイトからダウンロードするか、会社の担当部署から受け取ります。

ステップ2:申請書の構成を確認する

協会けんぽの申請書は全4ページで、記入する人が分かれています。

ページ 記入する人 主な内容
1〜2ページ目 本人(被保険者) 氏名・保険証の記号番号・振込口座・申請期間・報酬の有無など
3ページ目 事業主(会社) 勤務状況・給与の支払い状況の証明
4ページ目 療養担当者(医師) 傷病名・発病年月日・労務不能と認めた期間などの意見

4ページすべてを揃えて提出する必要があります。

ステップ3:医師に4ページ目を記入してもらう

診察の際に「傷病手当金の申請書を持ってきました」とお伝えください。医師が記入するのは労務不能と認めた期間などです。ここで重要な点が2つあります。

  • 医師が記入できるのは、診療経過等から労務不能であったと医学的に判断できる期間です。原則として初診日以降となりますが、転院の場合や診療情報提供書などにより過去の労務不能期間を確認できる場合には、初診日前に遡って記入できることもあります。一方、受診歴や客観的な資料がなく、医学的に労務不能であったことを判断できない期間については証明できません。
  • そのため休職する期間中も、定期的に受診を続ける必要があります

なお、この意見書の作成は健康保険の対象です。当院では3割負担で300円です(診断書などの他の文書は保険適用外で全額自己負担となります)。

ステップ4:会社に3ページ目を記入してもらう

勤務先の人事・総務に提出し、勤務状況と給与の支払い状況を証明してもらいます。

ステップ5:保険者に提出する

完成した申請書を、協会けんぽの都道府県支部または加入している健康保険組合へ提出します。会社経由で提出する運用の職場も多くあります。

ステップ6:審査・振込

支給決定通知書が届き、指定口座に振り込まれます。支給までの期間は保険者や審査内容によって異なります。協会けんぽでは、審査の結果支払い可能な場合、受付から10営業日以内の支払いとされています。なお、ここでいう「受付日」は、協会けんぽが申請書を受け付けた日であり、会社へ提出した日とは異なります。申請内容に確認が必要な場合などには、さらに時間を要することがあります。休職開始時には当面の生活費についても確認しておくと安心です。

申請のタイミングと注意点

まとめて申請するか、月ごとか

傷病手当金は1か月ごとに申請するのが一般的です。医師の意見書も、そのつど記入してもらいます。

数か月分をまとめて申請することも可能ですが、その分だけ入金が遅くなります。休職の開始直後は収入が途切れる期間が生じますので、手元の資金がどのくらいもつかを先に把握しておくことをおすすめします。

時効は2年

健康保険の給付を受ける権利は、受けられるようになった日の翌日から2年で時効となります。傷病手当金の場合、労務不能であった日ごとに、その翌日から起算します。1日ずつ時効が進んでいくとお考えください。

退職後も傷病手当金を受け取れる場合があります

次の2つを満たす場合、退職後も引き続き傷病手当金を受け取れます(資格喪失後の継続給付)。

  1. 退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
  2. 退職日(資格喪失日の前日)に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること

ここで注意が必要なのが、退職日の出勤です。退職日に出勤した場合は、資格喪失後の継続給付を受けられません。退職日は出勤しないよう、あらかじめ会社と調整しておいてください。

なお、退職後の資格喪失後継続給付では、いったん仕事に就くことができる状態となった場合、その後、同じ傷病で再び労務不能となっても、継続給付は再開されません。

ただし、その後に再就職して新たに健康保険の被保険者となった場合には、新たな被保険者資格に基づき、支給要件を満たせば傷病手当金の対象となることがあります。

他の給付との調整

次の給付を受けている場合、傷病手当金は調整(減額または不支給)されることがあります。

  • 出産手当金
  • 障害厚生年金・障害手当金(同一の傷病によるもの)
  • 老齢退職年金(退職後の継続給付を受けている場合)
  • 労災保険の休業補償給付

また、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)は、「就職する意思と能力があり、求職活動を行っていること」が前提です。そのため、病気のためすぐに働くことができない状態では、原則として基本手当の受給要件を満たしません。療養が長引く場合には、ハローワークで受給期間延長の手続きを行えることがあります。

休職を考えている方へ

実務上の進め方としては、次の順序がスムーズです。

  1. 受診し、診断を受ける——まずここが起点になります
  2. 診断書を書いてもらう——会社に休職を申し出るために必要です(当院では3,500円・当日発行可能)
  3. 会社に休職を申し出る——就業規則で休職制度の内容(期間・給与の扱い)を確認します
  4. 傷病手当金の申請を始める——休職開始後、1か月ごとに申請します
  5. 通院を継続する——医師が労務不能であったと医学的に判断するため、休職中も定期的な受診が大切です

なお、適応障害うつ病は診断名が異なりますが、どちらも傷病手当金の対象です。

よくある質問

Q. 会社に知られずに申請できますか?
傷病手当金の申請には事業主による勤務状況や給与支払い状況の証明が必要なため、勤務先に知られずに申請することは原則として困難です。申請書そのものは、ご本人から保険者へ提出することもできます。

Q. パート・アルバイトでも対象になりますか?
勤務先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に加入していれば対象です。扶養に入っている場合や国民健康保険の場合は対象外です。

Q. 傷病手当金に税金はかかりますか?
傷病手当金は非課税です。ただし社会保険料は免除されないため、休職中も納付が必要です(会社経由での支払い方法を確認しておいてください)。

Q. 転職して間もないのですが対象になりますか?
現在の勤務先の健康保険に加入していれば対象です。ただし被保険者期間が12か月未満の場合、支給額の計算方法が変わります。また、退職後の継続給付は「継続して1年以上」の被保険者期間が必要です。

Q. 1年6か月を過ぎたらどうなりますか?
傷病手当金は終了します。障害年金の対象になる場合や、退職を選ぶ場合など、状況に応じた選択肢があります。期限が近づく前に、主治医や勤務先の産業医、年金事務所などにご相談ください。

まとめ

  • 傷病手当金は給与の約3分の2が支給される健康保険の制度。うつ病も対象
  • 連続3日の待期が必要。有給・土日を含めてよい
  • 支給期間は通算1年6か月。復職した期間はカウントされない
  • 協会けんぽの申請書は全4ページ。本人・会社・医師がそれぞれ記入する
  • 医師が証明できるのは診療経過等から労務不能であったと医学的に判断できる期間。休職中も定期的な受診が大切
  • 時効は2年。退職日には出勤しないよう注意

制度の手続きは煩雑に見えますが、休むという判断を支えるために用意されたものです。療養に専念できる環境を整えるところから始めてください。

ご予約について
本記事の監修医師・福島康浩が院長を務めるアウル五反田駅前心療内科(五反田駅徒歩2分)は、朝8時から診察を行っており、当日の診断書発行、傷病手当金の申請書への記入、カウンセリングに対応しています。初診のご予約はWEB・LINE・お電話(03-5447-0300)から可能です。
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※本記事の制度に関する情報は2026年8月時点のものです。健康保険組合によって独自の付加給付や運用がある場合があります。最終的な取り扱いは、ご加入の保険者にご確認ください。

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