不眠は「なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」など、誰にでも起こりうる身近な悩みです。こうした状態は「睡眠障害」の一つとして位置づけられ、不眠症として治療の対象になることもあります。
一時的な不眠であれば自然に改善することもありますが、状態に合わない対処を続けると慢性化し、日中の集中力低下や気分の落ち込みにつながることがあります。
本記事では、睡眠障害(不眠症)の種類や原因、今日から実践できる治し方、医療機関での治療までを体系的に解説します。不眠に悩む方が安心して次の一歩を踏み出せるよう、わかりやすくお伝えします。
不眠とは?よくある症状と種類
不眠とは、十分な睡眠時間を確保しようとしても、睡眠の質や量に問題が生じ、日中の生活に支障をきたす状態を指します。医学的には、睡眠に関する問題全体を「睡眠障害」と呼び、その中で最も多いものが不眠症です。
一時的な寝不足とは異なり、睡眠に関する悩みが繰り返される点が特徴です。
まずは不眠の種類を知り、自分の状態を把握することが改善への第一歩となります。
【参考】休養・こころの健康|厚生労働省
不眠の主な4つのタイプ
不眠は主に以下の4つに分けられます。
- 入眠障害:布団に入ってもなかなか眠れない状態
- 中途覚醒:夜中に何度も目が覚め、その後眠りにくい状態
- 早朝覚醒:予定より早く目が覚め、再入眠できない状態
- 熟眠障害:睡眠時間は確保できているのに、眠った感じがしない状態
複数のタイプが同時に見られることもあり、睡眠障害として診断する際には、どの症状が中心かを整理することが重要です。症状の組み合わせによって適切な治し方は異なります。
一時的な不眠と慢性的な不眠の違いは?
数日から1〜2週間程度の不眠は、環境変化や生活リズムの乱れが原因で起こることが多く、自然に改善する場合もあります。一方、1か月以上不眠が続く場合は「慢性不眠」と考えられ、睡眠障害(不眠症)として医療機関での診断が必要になることもあります。
慢性化すると日中の疲労感や集中力低下、気分の落ち込みを招くため、早めの対応が重要です。
不眠の原因は?生活習慣・身体的要因・病気
不眠の原因は一つではなく、複数の要因が重なっていることが少なくありません。睡眠障害の背景には、生活習慣だけでなく身体的・精神的な病気が関係している場合もあります。
原因を知ることで、自分に合った治し方を選びやすくなります。
生活習慣の乱れによる不眠
不規則な就寝・起床時間、夜遅くまでのスマートフォン使用、寝る前のカフェインやアルコール摂取などは、体内時計を乱し、不眠を引き起こしやすくします。特に「眠れないから」と夜更かしを続けると、さらに寝つきが悪くなる悪循環に陥ります。
身体的な不調や病気が関係する不眠
不眠の背景に、身体的・精神的な病気が隠れていることもあります。自律神経の乱れ、うつ病や不安障害などの精神疾患、睡眠時無呼吸症候群や概日リズム睡眠障害といった睡眠障害などが代表的です。この場合、生活改善だけでは十分な効果が得られないことがあります。
今日からできる不眠の治し方(セルフケア)
不眠の多くは、日々の過ごし方や寝る前の習慣を整えることで軽くなることがあります。軽度の睡眠障害であれば、セルフケアによって改善が期待できる場合もあります。
大切なのは「気合いで寝る」のではなく、眠りを妨げる要因を減らし、自然に眠気が訪れる条件を作ることです。
睡眠の質を高める生活習慣(睡眠衛生)
まず意識したいのは、起床時間を一定にすることです。寝る時刻よりも起きる時刻を揃えるほうが体内時計が整いやすく、夜に眠気が来やすくなります。加えて、朝の光を浴びる・日中に適度に体を動かす・長い昼寝を避けるといった習慣は、夜間の睡眠圧(眠る力)を高めます。完璧を目指すより、できる項目から継続するのがコツです。
寝る前に意識したい行動
寝る前は、脳と体を「活動モード」から「休息モード」へ切り替える時間です。強い光(スマホ・PC)や刺激の強い作業は避け、照明を少し落として静かな時間を作りましょう。入浴は就寝の1〜2時間前が目安で、深部体温が下がるタイミングで眠気が出やすくなります。もし布団で20〜30分ほど眠れないなら、いったん起きて落ち着く行動(読書・呼吸法など)に切り替え、「布団=眠れない場所」という学習を防ぎます。
やってはいけない不眠対策
不眠を何とかしようとして、逆に睡眠を崩してしまう“落とし穴”があります。誤った対処は、不眠症を含む睡眠障害を慢性化させる原因になり得ます。
短期的には楽になったように見えても、体内時計の乱れや睡眠の質の低下につながる行動は注意が必要です。
無理に寝ようとする
「眠らなきゃ」と強く意識すると、交感神経が高まり、心拍や思考が活発になって寝つきにくくなります。時計を何度も見るほど焦りが増し、不眠を固定化させることもあります。眠れない日は“眠れないまま横になる”より、いったん離床して落ち着ける行動に切り替えるほうが、結果的に入眠しやすくなります。重要なのは、睡眠を「努力目標」にしないことです。
寝酒に頼る
アルコールは一時的に眠気を誘う一方、睡眠の後半で覚醒しやすく、眠りが浅くなることがあります。特に中途覚醒が増えたり、早朝に目が覚めたりして「寝たのに疲れが残る」状態になりがちです。また、量が増えやすい点も注意が必要です。どうしても飲む場合でも就寝直前は避け、量と頻度を見直すことが不眠改善につながります。
休日の寝だめ
平日の睡眠不足を休日に長時間寝て補うと、起床時刻が遅れ、体内時計が後ろにずれやすくなります。その結果、日曜夜〜週明けに寝つけない「社会的時差ボケ」が起き、不眠が悪循環になります。休日は平日との差をできるだけ小さくし、どうしても眠い場合は昼寝を短時間(目安20〜30分)に留めると、夜の睡眠に影響しにくくなります。
医療機関で行う不眠治療
セルフケアを続けても不眠が改善しない場合や、日中の生活に支障が出ている場合には、医療機関での治療が選択肢となります。睡眠障害として診断を行うことで、原因に応じた治療方針が立てやすくなります。
不眠の治療は一つに限られるものではなく、症状のタイプや背景に応じて、生活調整・精神療法・薬物療法などを組み合わせて行われます。
【参考】休養・こころの健康|厚生労働省
精神療法(主流は認知行動療法:CBT-I)
不眠に対する精神療法の中で、現在主流とされているのが認知行動療法(CBT-I)です。不眠症を含む睡眠障害に対して、薬に頼らない治療法として用いられることがあります。CBT-Iでは、睡眠を妨げている考え方や行動のクセに目を向け、少しずつ整えていくことを目的とします。
ただし、精神療法はCBT-Iだけに限られるものではなく、医療機関では患者さんの状態や困りごとに応じて、適切な心理的アプローチが検討されます。いずれの場合も、睡眠に対する過度な不安を和らげ、再び自然な眠りを取り戻すための土台作りが重視されます。
薬物療法
睡眠薬は、不眠のタイプ(寝つけない・途中で目が覚めるなど)や生活状況に合わせて医師が判断し、必要最小限で使用されます。依存を心配される方も多いですが、医師の管理下で適切に使用することで、安全性に配慮した治療が可能です。
また、薬物療法は「眠らせること」だけを目的とするものではありません。生活習慣の見直しや精神療法と併用しながら、睡眠リズムを立て直す補助的な役割として位置づけられることが一般的です。
医師に相談すべき不眠のサイン
不眠は一時的なものであれば様子を見ることも可能ですが、一定期間続く場合や日常生活への影響が大きい場合は、専門家に相談することが大切です。
特に以下の場合は、慢性化のサインと考えられます。
- 1か月以上不眠が続いている
- 寝不足によって仕事や家事に集中できない
- 日中の強い眠気や倦怠感がある
また、気分の落ち込みや不安感が強い、夜間のいびきや呼吸停止を指摘されたことがあるなど、他の症状を伴う場合には、背景に別の疾患が関与している可能性もあります。
睡眠障害が疑われる場合、早めの受診が改善につながることもあります。
不眠を心療内科・精神科で相談するメリット
不眠が続くと、「また眠れないのではないか」という不安そのものが新たなストレスとなり、さらに眠れなくなる悪循環に陥りがちです。
心療内科・精神科では、不眠を単なる睡眠の問題としてではなく、生活背景や心身の状態を含めて総合的に診断します。
専門医に相談することで、生活習慣のどこを見直すべきか、精神療法や薬物療法が必要かなどを整理でき、無理のない改善計画を立てやすくなります。
一人で抱え込まず、医学的な視点からのサポートを受けることが、安心して眠りを取り戻す近道になる場合もあります。
【参考】休養・こころの健康|厚生労働省
まとめ|睡眠障害・不眠症で悩んだら早めの相談を
不眠は一時的な体調変化として起こることもありますが、長引く場合は睡眠障害(不眠症)として専門的な視点での診断が必要になることもあります。セルフケアで改善するケースもある一方で、「何が原因かわからない」「対処しても眠れない状態が続く」と感じたときには、無理に一人で抱え込む必要はありません。
心療内科・精神科では、睡眠の問題だけを見るのではなく、生活リズムやストレスの状況、心身全体の状態を丁寧に確認しながら、その方に合った改善の方向性を一緒に考えていきます。不眠や睡眠障害はデリケートな悩みだからこそ、安心して話せる環境が大切です。
アウル五反田駅前心療内科には、五反田周辺だけでなく、品川区・大田区・港区など幅広いエリアから、睡眠障害や不眠症の相談で来院される方がいらっしゃいます。症状や背景は人それぞれ異なるため、話を丁寧に伺いながら、無理のない治療やサポートを大切にしています。
「眠れない日が続いている」「この状態を誰かに相談したい」と感じたときは、早めに専門医の視点を取り入れることが、安心して眠りを取り戻す第一歩になる場合もあります。